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【途中下車の旅】JRの旅行で途中下車をする方法を徹底解説【基本から裏技まで】

はじめに

以下の記事は、私が以前noteにて執筆したものを一部改変し、移植したものです。内容は大方同一ですので、予めご了承ください。

https://note.com/lemon_slime/n/n47f9a7b757a7

本題

みなさん、こんにちは。
普段はマインクラフトやリズム天国MADの動画を制作している者ですが、今回は、私が普段触れない鉄道旅行に関する話をしようと思います。

いつまでも画面の中に引きこもっていて空虚感に襲われる今日この頃です。

途中下車とは?

みなさん、旅行はお好きですか?
知らない場所に行き、素晴らしい景色を見るというのはとても楽しいものですが、鉄道旅行において、この醍醐味をさらに引き立ててくれるものがあります。
それが、「途中下車」。

「途中下車」とはその名の通り、旅行中に列車を降りることを言います。これによって、単なる二次元的旅行(地点A→地点B)が、三次元的旅行(地点A→地点C→地点B)になります。一度の旅行で多くの場所を訪れることができるので、是非活用したいところ。

ただ、賢く途中下車を行わないと、運賃が高くなることがあるんです。
安く途中下車ができるのなら、それに越したことはないですよね・・・?
以下で詳しく解説します。

大原則

まず、「青春18きっぷ」など、乗り放題型の切符を持っている場合は、当然ですが、途中下車をしても追加で運賃がかかることはありません。深いことを考えず、自由な旅行を楽しみましょう!

一方で、ICカードの場合は、途中下車ができません。当然ですね。
フリーパスタイプを除く、一部の企画乗車券(「ぷらっとこだま」といった旅行商品に多い)についても途中下車が禁じられている場合があります。この場合、切符の注意点を把握する必要があります。
特急券も途中下車をすると回収されます。ただ、本来特急券は速達性を求めて購入するものなので、途中下車の旅との相性は悪く、あまり問題にならないのかもしれません。

では、普通の乗車券(券売機や窓口等で発券する、一般的な切符)を持っている場合はどうでしょう?
この場合は、厄介です。
以下では、このタイプである「普通乗車券」にフォーカスを当てて解説していきます。

例えば、上の切符のように、「下車前途無効」と書かれている場合は、途中下車した駅で切符は回収され、旅行を再開する場合は再度切符を買いなおさなければなりません。(以下では、このことを便宜上、「途中下車できない」と記述します)
つまり、途中下車で運賃が高くなるんです(初乗り運賃をその都度払うため)[注1]。これはいけません。

では、どういう場合に「下車前途無効」となり、どういう場合に「下車前途無効」とならない(=途中下車自由)のでしょうか?
これに関しては、JRの旅客営業規則に書かれています。

旅客営業規則 156条

旅客は、旅行開始後、その所持する乗車券によって、その券面に表示された発着区間内の着駅(旅客運賃が同額のため2駅以上を共通の着駅とした乗車券については、最終着駅)以外の駅に下車して出場した後、再び列車に乗り継いで旅行することができる。ただし、次の各号に定める駅を除く。

(1)全区間の営業キロが片道100キロメートルまでの区間に対する普通乗車券を使用する場合は、その区間内の駅。ただし、列車の接続駅で、接続関係等の理由により、旅客が下車を希望する場合で、旅客鉄道会社が指定した駅に下車するときを除く。

(2)次に掲げる区間(以下「大都市近郊区間」という。)内の駅相互発着の普通乗車券を使用する場合は、その区間内の駅

https://www.jreast.co.jp/ryokaku/02_hen/04_syo/02_setsu/02.htmlより引用

すなわち、

原則として途中下車は自由だよ。だけど、

片道100km以下の旅行
または
「大都市近郊区間」内で完結する旅行

の場合は、途中下車はできないよ。[注2]

ということです。
(注)「大都市近郊区間」とは、東京・大阪・福岡・新潟・仙台の付近にある規定の区間のこと。こちらのページに詳しく記されている↓

https://www.jr-odekake.net/railroad/ticket/guide/normal_tickets/special_provisions06.html

例えば、「東京近郊区間」は下の画像が示す通り。

裏を返せば、
片道100kmを超える旅行
かつ
「大都市近郊区間」の外に出る旅行

なら自由に途中下車が可能なんです。[注3]
例えば、「東京(都区内)→大阪(市内)(東海道経由)」は100kmを超え、「大都市近郊区間」の外に出る移動なので、途中下車は自由[注4]。追加で運賃を払うことなく、静岡にも名古屋にも京都にも寄り道可能です。(新幹線に乗る場合、特急券は別途必要になります)


[注1]場合によっては運賃計算を打ち切ったほうが安くなる区間が存在するが、レアケース。
[注2][注3][注4]より厳密に言うと、特定都区市内・東京山手線内が発着の乗車券については、その特定都区市内・東京山手線内にある駅で途中下車できません。例えば、「東京都区内→大阪市内」の乗車券で、都区内の駅や大阪市内の駅で途中下車できません。細かい話なので、以下では省略します。

大都市近郊区間内でも途中下車がしたい!

これまで述べたように、基本的に長距離の移動においては途中下車が可能です。しかし、「大都市近郊区間」で完結する移動では、途中下車ができません
例えば、長野県の松本駅から、福島県の浪江駅まで、東京駅を経由して移動することを考えます(下図)。

実は、両駅間の距離は500km以上あるんです。本来なら途中下車可能な距離。しかし、大都市近郊区間で移動が完結するので、途中下車不可となります。これは困りました。

さて、このような場合には、以下のような選択肢が取り得ます。

【基本】大都市近郊区間の外に出る

上記の「松本→浪江」の例だと、乗車券の区間を「松本→浪江」としてしまうから途中下車ができなくなるんです。大都市近郊区間の図をよく見てください。松本より北側は大都市近郊区間の外ですよね。

つまり、乗車券の区間を「松本→浪江」ではなく、一駅隣の「北松本→浪江」とすれば、大都市近郊区間を外れ、途中下車が可能になるんです。偶然にも、両者の運賃は同じです。

「北松本→浪江」の乗車券を買ったからといって、北松本駅から列車に乗らなければならない、というわけではありません。北松本→松本間の乗車の権利を放棄し、松本駅から旅行を始めることも可能です(ただし、後でその区間を乗ることはできません)。これを「内包乗車」と呼びます。

「松本→浪江」という極端な例ではなくても、「東京→甲府」(134.1km)の移動にもこの方法は有効です。
中央本線(JR東日本区間)は大都市近郊区間の範囲内ですが、甲府駅より南に伸びる身延線(JR東海区間)は大都市近郊区間から外れています。

つまり、「東京→甲府」の乗車券ではなく、一駅隣の「東京→金手」の乗車券を買うと、途中下車が可能になるんです。またもや、両者の運賃は同じです。

【基本】新幹線経由にする

実は、基本的に新幹線は大都市近郊区間外なんです(※ただし大阪近郊区間の一部を除く)。だから、(大阪近郊区間を除く)新幹線経由の乗車券は、大都市近郊区間で完結しません。

例えば、「東京→宇都宮」(109.5km)という移動を考えてみます。もし在来線(宇都宮線)経由だと、移動が大都市近郊区間で完結してしまうため、途中下車ができません。

しかし、東京・宇都宮間には東北新幹線が走っており、この東北新幹線経由の乗車券にすると、大都市近郊区間を外れ、(同時に100km以上の移動であるから)途中下車が可能になります。

100km以上ある区間の場合、大都市近郊区間を「一部でも」外れれば途中下車が可能になるわけですから、例えば「東京→上野」だけを新幹線経由にするのも有効です。

なお、新幹線経由の乗車券を買ったからといって必ずしも新幹線に乗る必要はありません。新幹線は、運賃計算上、それと並行するJR在来線と同一視できるためです(選択乗車)。
例えば、新幹線経由の「東京→宇都宮」の乗車券を持っている場合、並行する宇都宮線(東北本線)の普通列車に乗車可能です。
余談ですが、在来線経由の乗車券を持っていたとしても、同様に、必ずしも在来線を利用する必要はありません。別途特急券を購入すれば並行する新幹線に乗車可能です。

基本的に、新幹線経由の乗車券と在来線経由の乗車券の運賃は同じに設定されることが多いので、大都市近郊区間内で途中下車したかったら、この方法を用いるのが鉄則でしょう。

応用として、「北千住→日立」(141.7km)の場合を考えてみましょう。
北千住~日立間には新幹線はありません(常磐線経由)。従って、一見するとこの方法は使えないように見えます。

しかし、東京~上野間には東北新幹線があるので、これを利用してみましょう。つまり、「北千住→日立」に「東京→上野(→北千住)」を加えて、「東京(山手線内)→北千住」という乗車券を購入するのです(東京・上野間は東北新幹線)。
すると、これは大都市近郊区間外を含む片道100km以上の区間となるので、途中下車が可能になります。

このときの区間は152.7kmであり、100km~200kmの範囲内ですから、自動的に発駅が「東京山手線内」となります。そして偶然にも、「東京→日立」(152.7km)と「北千住→日立」(141.7km)の運賃は同じです。(どちらの運賃も、140~160kmの距離に相当する2640円です)もちろん例にもれず、この乗車券で北千住から旅行を開始することができます。(内包乗車)

同じ金額を払っているのに、買い方によって途中下車が可能になったり不可能になったりするんですね。

※大阪近郊区間の場合は少し異なり、新幹線でも区間によって大都市近郊区間内になったり大都市近郊区間外になったりします。下図。

この場合、新幹線経由の「新大阪~西明石」間を経路に含む100km以上の区間は途中下車が可能になります。

【裏技】220円で途中下車し放題

片道100km以下の区間や、大都市近郊区間で完結する場合は、途中下車が原則不可能であることは前に説明した通りです。
しかし、「水戸~前橋(常磐・水戸・両毛線経由)」など、大都市近郊区間を外れるのが難しい区間かつ新幹線を選べない区間では、上記①や②の方法が使えず、このままだと途中下車ができません。これは困りました。

実は、このような区間でも、無理やり途中下車を可能にする方法があるんです!
鍵となるのが、以下の旅客営業規則274条。↓

旅客営業規則 274条

旅客は、普通乗車券を使用して旅行を開始した後、旅行を中止した場合は、その乗車券が、有効期間内であって、かつ、その現に使用している券片の乗車しない区間の営業キロが、100キロメートルを超えるとき(乗車変更の取扱いをしたため100キロメートルを超える場合を除く。)に限って、これをその旅行を中止した駅に差し出し、既に支払った旅客運賃から既に乗車した区間の普通旅客運賃(~中略~)を差し引いた残額の払いもどしを請求することができる。この場合、旅客は、手数料として、乗車券1枚につき220円を支払うものとする。

https://www.jreast.co.jp/ryokaku/02_hen/07_syo/03_setsu/07.htmlより引用

つまり、

残りの乗車していない区間が100kmを超えるときは、220円(手数料)で乗車券を払い戻しできるよ。

ということになります(旅行中止)。

これを用いて、前述の水戸~前橋の移動を途中下車可能にしてみましょう。

まず、終着駅の前橋から100km以上離れた任意のJRの駅を1つ選びます。ただし、以下の2点に留意する必要があります。

  • 発駅に戻る方向を選ぶことはできない
  • 大都市近郊区間の外にでる必要がある

ここでは、「新潟駅」としました。

次に、先ほど選んだ駅を終着駅とする乗車券を購入します。
この場合は「水戸~新潟(常磐・水戸・両毛・上越・信越)」ですね。
これは大都市近郊区間の外に出る、100km以上の区間ですから、途中下車が可能になります。

最後に、この乗車券を使用し、経路内の好きな駅で途中下車を繰り返し、前橋駅に到着した時点でこの乗車券を払い戻します。(要220円)
前橋~新潟間は優に100kmを超えるので、払い戻しが可能です。

この方法を用いることで、途中下車が不可能な区間が、220円で可能になりました。
ただ、この方法はあくまで最終手段ですね。220円を払わずに済むのならそれに越したことはありません。

※この方法で途中下車を繰り返した場合と、その都度切符を買う場合を比較すると、区間や途中下車の回数によりますが、その差は数十円~百円程度であることが多いです。また、途中下車を行わないか、1、2回しかしなかった場合、手数料220円のせいでかえって割高になる場合があります。

【荒業】定期券を買う

これまで、途中下車を可能にする方法についてあれこれ説明してきました。
しかし、これらの方法は、都市部の短距離の移動においては不向きです。
この問題を解決する最後の策が一つだけあります。
それは「定期券を買う」ということ。

「確かに定期券を買うと途中下車が自由になるけれど、頻繁にその区間に乗るわけではないし、お金の無駄では・・・?」
「途中下車にこだわって無駄遣いするなんて本末転倒だ。」

と思われるかもしれません。もう少しお付き合いください。

そもそもですが、定期券は(条件付きで)払い戻しができます。

重要なのは以下の部分です。

「なお、買い間違いなどのやむを得ない理由により、定期券の有効開始直後に不要となった場合は、有効期間の開始後7日以内に限り、発売額からすでに経過した日数分の往復運賃と払いもどし手数料を差し引いた額を払いもどすことがあります。」

そして、この「払い戻し手数料」は220円と定められています。
すなわち、定期券を n 日分使ったのち払戻す場合は、
(その区間の往復運賃)× n +220円
が必要ということですね。(ただし n ≦ 7)

例えば「東京⇔大宮」(片道:570円)間の定期券を1日使って払戻す場合
(570×2)×1日+220 = 1360円
必要です。
逆に、1360円を支払えば、東京⇔大宮間が一日乗り降り自由(=途中下車自由)と考えることができます。
そして、このような方法は、定期券を購入可能な全区間に応用できます。

しかし、この方法ですが、あまり積極的に勧められるものではありません。
というのも、上記の文末に「払戻すことがあります」とあり、実際に払戻すかどうかは係員の裁量に委ねられていると判断できるからです。残念ながら、「払い戻さない」と言われても文句は言えないのです。
したがって、実行の際は自己責任でお願いします

おしまい

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ご意見やご指摘等ございましたら、コメント欄にて教えていただけると幸甚に存じます。

普段は、このような交通に関すること(とりわけJRの規則)や、Davinci Resolveを用いた動画編集についてを中心に記事を執筆しておりますので、よろしければ、ほかの記事もご覧ください。

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